車内で楽しむ新しい音楽フェス 「ドライブインフェス Vol.1 」が千葉ロングウッドステーションにて開催さた。「ドライブインフェス」は“車の中で我慢”するのではなく、“車だから楽しい”というポジティブな視点で、新しいイベント・音楽フェスの楽しみ方を提案している。
主催は「泡パ」、「バスタブシネマ」など、斬新な体験イベントをプロデュースするアフロマンス率いる「Afro&Co.」。会場には約100台のクルマが集結し、フィジカルの現場で音楽を楽しんだ。
また今回は、「Defy The Rules of Satisfaction(満足を越えよう、価値観に挑もう)」をメッセージに掲げる「glo™」と音楽マルチメディア「block.fm」のコラボによる新しい音楽プロジェクト「glo™ & block.fm LIVE」が「ドライブインフェス」スポンサーとして、会場でのライブが「VIRTUAL DRIVE IN FES」としてインスタライブでも生配信された。
「ドライブインフェス」で、来場者はラジオのFM電波を利用してメインステージから音声を受信する。クルマから降りることなく音楽が楽しめるのが大きな特徴だ。入り口では参加者全員の身分確認と検温を実施。駐車エリアの右側に限ってのみ、マスク着用で外に出ることも可能である。実際に参加してみて、オススメはやはり車内で音楽を楽しむスタイル。外の出音よりもクリアに、ある程度どんなカーオーディオでも臨場感溢れる迫力のサウンドを楽しむことができるのだ。これこそが「ドライブインフェス」を体験して驚いた一番のポイントである。
また、「ドライブインフェス」では、フードやドリンクをLINE公式アカウントからボタンひとつでオーダーでき、とても便利だと感じた。LINE公式アカウントからフードやドリンクを頼めば、ローラースケートを履いたスタッフがクルマまでデリバリーしてくれるのだ。そんな工夫を凝らした演出が、レトロなドライブインシアターを彷彿とする会場ロケーションともマッチしていた。トイレに行く際もLINEで混雑状況を確認でき、他人との接触をできるだけ避けられるように工夫されている。フェス中、トイレ以外はクルマの中だけで完結できるような仕組みになっているのだ。
さらに会場には「カーフォトブース」も設置されており、「VIRTUAL DRIVE IN FES」をイメージした近未来的デザインのパネル前で、車に乗ったまま記念撮影ができるようになっていた。愛車とともにフェスの思い出が残せるのも、「ドライブインフェス」ならではのアイデアだろう。
行き帰りには出演者がキュレーションしたプレイリストが公式アカウントから配信され、フ
ェスに向かうワクワクと帰り道の余韻まで演出してもらえるのも嬉しい。
夕暮れのステージ向こうの積乱雲に夏の遠雷が光る幻想的な光景が広がるなか、シンガーソングライター/トラックメーカー/DJとして音楽シーンはもとよりファッションブランドとのタイアップなど国内外を問わずその活動の幅を広げるMaika Loubtéからライブはスタート。この「ドライブインフェス」のコンセプトにふさわしい、キャッチーでアクティブなライブを展開し、美しい歌声を響かせた。glo™&block.fmのインスタLive配信でもハッピーバイブス溢れるライブパフォーマンスが印象的だったが、今回はお客さんを目の前に、Maika Loubté自身も一層楽しそうに見えた。2019年にリリースしたアルバム『Closer』収録の人気曲「Nobara」が披露された際には思わずクルマから降りて踊り出してしまったほど、ポジティブなパワーに満ちあふれたライブだった。
次に登場したのはYonYon。自身のアーティスト活動と並行し、イベントオーガナイズや、日韓のプロデューサーとアーティストを繋ぐ「The Link」プロジェクトを展開するなどマルチに活動するクリエイター/DJである。キャッチーな楽曲からディープなダンスミュージックまで、ギュッと濃縮したDJingを披露してくれた。気鋭のアーティスト(sic)boyとKMによる「Heaven’s Drive」といったクルマに因んだキーワードの楽曲を盛り込みつつ、日本と韓国を中心にグローバルなアーティストの楽曲をフォロー。アフロビーツの濃厚なビートが続いたかと思えば、楽曲の配信が解禁されたばかりの小泉今日子『Koizumi House』から軽妙なボーカルが小気味良い「CDJ」をドロップし、前述の「The Link」プロジェクトで韓国のプロデューサーMOON YIRANG、YonYon、一十三十一がリンクした「Over F low(変身)」を繋ぐ。YonYonの持つ音楽的なアイデンティティとルーツを感じるDJを体感できた。最後にプレイされたスピッツ「青い車」の選曲も気が効いている。
オカモトレイジ(OKAMOTO’S)は自身の愛するK-POPと交流のある仲間たち、主にヒップホップトラックを織り交ぜた、らしい選曲で楽しませてくれた。まずは挨拶代わりとばかりにDJ CHARI & DJ TATSUKIによる、Tohji、Elle Teresa、韓国のUNEDUCATED KIDとFuturistic Swaverという日韓気鋭のアーティストを迎えた楽曲「GOKU VIBES」をカマす。また、PUNPEE本人が中国のツアーや国内フェスでも披露しているPUNPEE「Scenario (Film) 」とサカナクション「忘れられないの」のマッシュアップは両方好きな筆者としてはまさに忘れられないハイライトとなった。後半はケツメイシ、宇多田ヒカル、加藤ミリヤ、安室奈美恵など世代的に“あの頃”のツボを刺激しまくる青春J-POPミックスで会場はカラオケ大会の様相を呈する大盛り上がりとなった。
クライマックスが近づくとTomoyuki Tanaka(FPM)、Shinichi Osawaといった百戦錬磨のベテランが千葉ロングウッドステーションに顕現。Tomoyuki Tanakaはダンサブルでアグレッシブなハウス・ディスコを巧みに選曲。アダルトな色気を感じさせるミックスを披露。続くShinichi Osawaはエレクトロやブロステップといった、ハードコアなサウンドを中心に会場を盛り上げた。高々と上がる炎の特効が冴える会場の雰囲気も最高潮。レポートを書く身としては両者の選曲を詳細に確認しながら楽しむべきだったのだろうが、正直そんなことは二の次で、両者の手元から紡がれていくグルーヴにただ身を委ねて身体を揺らし、踊ることに没頭してしまっていた。まるで、海外のフェスにやって来たかのような臨場感、ダイナミックな演出と音の波が身体に流れ込み、久しく忘れていたフェスの感覚が蘇ってくるようだった。
Day1のトリを務めたShinichi Osawaは最後の最後、西方裕之を原曲として切腹ピストルズ、向井秀徳 (NUMBER GIRL、ZAZEN BOYS)、小泉今日子、マヒトゥ・ザ・ピーポー (GEZAN)、ILL-BOSSTINO (THA BLUE HERB)、伊藤雄和 (OLEDICKFOGGY)をゲストボーカルに迎えた「日本列島やり直し音頭二〇二〇」をかけた。映画監督の豊田利晃の作品『破壊の日』のテーマソングとなっている楽曲であるが、コロナ禍によって祭りのない夏に新しいかたちで行われた“祭り”のしめくくりとして、今の日本にエールを送るこの楽曲のチョイスには、ただただ感服するばかりだ。
「ドライブインフェス」はクルマというツールを通して、DJやアーティストによる音楽、会場の演出、そして来場者と出演者、各々の持つ記憶と経験がその場でミックスされることで相対的に“ニューノーマル”な感覚を生みだしている。ありそうでなかったもの、もともとあったものを組み合わせ、融合させ、これまでにない楽しみ方で参加者の想像を超えた体験を提供してくれるのだ。そして今後さらに発展していく可能性をも感じさせてくれるものだ
った。
当然、集まっているクルマの型も違えば、楽しみ方や過ごし方もそれぞれ。クルマを使ったライトのパッシングやワイパー、ハザードランプのレスポンスに始まり、ルーフから顔を出してアーティストに手を振ったり、オープンカーでノリノリで踊ったり、野外フェスさながらキャンプチェアを用意して駐車スペースでくつろいだり。来場者の工夫次第で多様な遊び方が見られたのも発見である。
今までのフェスではフェイスペイントや衣装にこだわるといったことが主流だった。しかし、「ドライブインフェス」が発展していくことで、“ニューノーマル”なエンターテイメントとして浸透したとしたら、クルマがフェスを楽しむためのツールになり、オーディオや内外装をフェス仕様にカスタムして楽しむ、ということがフェスにおける新たなトレンドになっていくかもしれない。
さらに今回はglo™のインスタグラムよりライブ配信も行われ、会場に来られなかった音楽ファンにも夏フェスの雰囲気を届けていた部分も印象深い。配信画面のコメント欄は「お家で踊ってます!」「音楽も演出も最高!」「夏の思い出になりました」といった視聴者からの喜びのコメントで大盛りあがり。現場でも、音はカーステで、映像はインスタライブで、と組み合わせて楽しんでいる人も見受けられた。リアルとオンライン、どちらのファンにも夏フェスを届けられたことは、特に今年の夏において大きな意義のあることだろう。
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